第8回

針の示す先

 

針は、確実に北を指していた。

この先には竜の頂、ドラゴンズピークが待ち受ける、難所だ。

しかし、あたし達はそんなことを気にせずレイ・ウィングで一気に飛んでいった。

「このペースで行けば、ゼルガディスさんは今日中に会えそうですね。」

アメリアは喜んだ顔でそう言った。

「うれしそうね、アメリア。そうね、久しぶりだもんね。ゼルと会うのも。」

しかし、あたしは分かっていた。アメリアが喜ぶ理由はそれだけじゃないと言うことが。

「それより、この先は難所ですよ。休まなくても良いんですか?」

アメリアは少し疲れたらしく、私に休養を望んできた。

「もう少しで竜の峰よ、中腹辺りで休みましょう。」

休んでたらゼルが先に行っちゃうでしょ。と、言おうと思ったが躊躇した。

あたしはそういうと、いっそうレイ・ウィングのスピードを上げた。

 

「ふー、綺麗な紅葉ですね〜。」

アメリアは山の麓の方を見ながら言った。

確かにこのころは山の色合いが緑から赤系に変わる。とても美しい季節だ。

「ゼルガディスさん、依然山の方にいるみたいです…」

アメリアは、自分が持っている羅針盤に目を遣りそう言った。

「流石に、そろそろ追いつくはずなのにねー。」

あたしも少し疲れてしまった。うーみゅ、最近魔法を使ってなかったからな〜…

「魔力を消費しすぎるのもヤバいし、此処からは歩きましょう!リナさん!!」

アメリアは元気が復活したのかそう言った。

「そうね、ゼルもどうせ歩いてるんでしょうね。」

私もそう決意した。

しかし、針は依然として山を指していた。


 

針の示す先 完

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