第4回
闇夜のいざない
今夜も山奥に火炎球の花が咲いた・・・・・・・・・
「うわーーーーー!!!」
「貴様!何者だ!」
盗賊たちはいつも同じような台詞を言う。相変わらず同じ顔に見えるのは気のせいだろうか・・・・・・・・・
あたしの名前を聞いてくるものだから、ちゃんと教えてあげようかな・・・
「あたし?あたしの名前はあんたたちには有名でしょ・・・盗族殺しのリナ・インバースって。」
「何!まさか貴様があの有名なリナ・インバースだと・・・・・・確かに胸は無いけど・・・・・・・・・」
ちゅど〜〜〜〜〜〜〜〜ん
かくして、その不用意な一言で、山には特大の炎の花が咲き、盗賊団ひとつが見事に消え去ったのであった。
「・・・・・・・・・は〜ぁ、退屈だな〜・・・・・・」
あたしは盗賊から奪った宝物を分別しながら呟いた。あまりめぼしいお宝が無かったからだ・・・・・・・・・
しかし、そんなあたしの予想は見事に反転した。中に微妙に違和感を感じるものがあったからだ。
それはひとつの水晶球。胡桃の実ほどしかないその珠にはふつうの水晶球とは違う違和感があった・・・・・・
中にヘキサグラムが描かれている。
「これはもしかして・・・・・・・・・・・・」
あたしは気になってよく調べてみる。どうにもこの水晶球には防御魔法がかかっているみたいだ。
しかしそれはただの防御結界じゃない・・・高位の、しかも世界で3番目くらいに入るくらいの・・・・・・
しかもこの結界にはあたしは覚えがあった。セイルーンの王族のみが使用できる結界だった・・・・・・
「アメリアに聞いてみるべきね・・・・・・」
あたしはひとつの謎を気にしながら床についた・・・・・・・・・
「リナさん!おはようございます!!!」
アメリアは早朝から元気がいい。どこから出てくるんだ、その元気は・・・・・・・・・
「ちょっとアメリア。この水晶球に覚えが無い?セイルーン王族関係だと思うんだけど・・・・・・」
「あ!ちょっとリナさん!これって!・・・・・・」
アメリアはあたしから水晶球を奪うようにとって、日にかざして見始める。
「リナさん・・・・・・これあたしのです・・・・・・いつ取ったんですか!」
「ちょ!ちょっと、これはあたしが昨晩に盗賊たちから取ったものよ。」
「え?何で盗賊たちがあたしの水晶球を・・・・・・」
「アメリア?あんた誰かに1回水晶球をあげたとか・・・そんなこと無い?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
アメリアは黙り込んだ。そして重たそうな口をゆっくりと動かしだす。その口から出た言葉は、まさに以外そのものだった。
「いっかい、ゼルガディスさんにあげました・・・・・・・・・」
そうだった、アメリアは昔異界の魔王と戦った後にゼルガディスにこれをあげていたのだ。
「もしかして、ゼルガディスさんのこと知っているんじゃ・・・・・・」
「なら、今晩その盗賊たちがいた所に行ってみる?」
「はい、行ってみましょう・・・・・・」
森の奥では見知らぬ鳥の声が聞こえてくる・・・もう月が頭上に来ている。
「ここよ、アメリア・・・・・・どうやら相手はお待ちかねみたいよ。」
「そうみたいですね、リナさん。」
そこまで言うと、草陰から20人ほどの男たちが現れた・・・・・・・・・
「へっへっへ!貴様には昨日の晩は寝込みを襲われたが、今度はこっちの奇襲だ!」
アメリアの手はプルプル震えている。
「あんたたち。この水晶球に覚えは無い?」
盗賊の頭らしき奴はあっさりと答えた。
「それか?それを持ってた奴はなかなか面白かったぞ。合成獣みないな人間だったな。」
「やっぱりゼルガディスさんですね・・・・・・・・・」
アメリアは静かにそう答えた。
「5日前くらいの昼ににそれを道に落としていっただけだ。ここを北に向かってったぜ。」
「あんた情けないわね。まぁ、もし戦ってちゃ、ゼルには勝てなかったわよ・・・・・・」
そこまで言うと、あたしとアメリあの魔法が同時に炸裂する!
「裂火球!」
「火炎球!」
ちゅどーーーーーん!!
二日続けて山には炎の花が咲く。しかも二つ・・・
「さぁ、あんた一人だけよ・・・・・・」
「あなたは許しません。悪の道に足を汚し、邪道非道なことをやり続けたあなたには、それなりの裁きを受けてもらいます。」
アメリアは呪文を詠唱し始める。しかし、その呪文はまさか!?
「永久と無限をたゆたいし 総ての心の源よ 尽きることなき蒼き炎よ
わが手に集いて閃光となり 深淵の闇を打ち払え!
崩霊裂(ラ・ティルト)!」
ぐわ〜〜〜〜〜〜〜!!!!
崩霊裂。人間ならあっさりと滅ぼす技である。ちょっとひどいんじゃないかな・・・・・・
「アメリア・・・・・・・・」
「行きましょう。ゼルガディスさんは近いですよ・・・・・・・・・」
アメリアの顔にいつもの笑みが一瞬だけ消えていた。
盗賊団は完全に消えた。頭の精神崩壊と共に・・・・・・
ゼルガディスは近くにいる。今は仲間を求めて探しているのみ。
闇夜のいざないにも運命の神は潜んでいるのだろうか・・・・・・・・・・・・
闇夜のいざない 完