第1回

春風と共に・・・


 

玄関先にある桜の花は春風と共に散り始めている。

あたしはリナ・インバース。今は実家で休養中だ。

庭ではディルギアがワンワンほえている。

自分の部屋の窓からポーっと眺めていたあたしを現実世界に引き込んだのは、あたしのねーちゃん。ルナ・インバースだった。

「リナ!ボーっとしてないで何か手伝ってよ!」

さすがにあたしは姉の命令には逆らえない。

「はーい。」

いくら言われてもやる気がおきてこない。春になってからあたしはこの調子だ。

春の温かみがあたしの脳みそまで溶かしてしまったのだろうか?

「溶けた・・・・・・・・脳みそか・・・・・・ガウリィ何してんだろ、今ごろ。」

サイラーグでの戦いのあと、ほんとにガウリィはゼフィーリアまでついてきた。

でも結局、あたしの家までついてきたら、ぶどうだけ食べて帰っちゃったしな・・・・・・

「リナ!早くしなさい!」

「はーい!」

空元気とはこのことを言うのだろうか?中途半端な感じがしてしょうがない。

この辺の盗賊は全部倒しちゃったしな。

「リナ?どうしたの最近?やけに元気が無いじゃない。」

ねーちゃんがあたしの顔を見つめている。

「ううん。なんでもない。」

「姐さん!散歩に行きましょう!」

「あー!わかった!今いくわ!」

どうやらディルギアの散歩の時間のようだ。

「じゃあリナ!あたしが帰ってくるまでにその調子を戻しておきなさい!もう一週間よ!」

そういってねーちゃんは外に走っていった。ディルギアの声はどんどん遠ざかってゆく。

そうか・・・ガウリィがいなくなってもう一週間もたつのか・・・・・・あいたいな・・・・・・

どうしてこんなになっちゃったんだろう。いっしょにいたときは気づかなかったけど・・・・・・・・・・・・

そう思っていたその時だった。

『リナ。自分が好きなようにしなさい。あなたが見てきた世界を、もっと深くね・・・・・・』

「ねーちゃん!」

しかしそこには誰もいない。でも声は聞こえた・・・・・・・・・・・

好きなように・・・・・・・・・か。

「よし!」

ひとつのことを決断したあたしは部屋に戻り、今までの格好をする。マントにショルダーガード。そしてバンダナ!

「あたしはもう一度旅に出る!新しい何かを探しに!」

あたしはそういって旅立つ!ガウリィを、アメリアを、ゼルガディスを探しに!

 

「・・・・・・・・・姐さん。これでいいんですか?」

「いいのよディルギア。リナにはリナの生き方があるの。あたしは口も手も出さないわ」

「そうっすね。さ!散歩散歩!」

「はいはい。あら、もう桜も散り始めてきたわね・・・・・・・・・・・・」

 

春風と共に 完

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